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YOSHI

「紀尾井清堂」を見る

2025.09.22

さてさて、インテリアの次は建築のお話。
皆様、「紀尾井清堂」ってご存じですか?

「紀尾井清堂」は、千代田区紀尾井町にある一般社団法人倫理研究所が所有する建築物。
普段は一般公開されていないのですが、現在「建築家・内藤廣なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂」という催しで一般公開されているとのことで見学しに行ってきました。

この建築の何が凄いかというと、その存在意義。

普通 建築と言えば、その用途は明確なもの。
公共施設や商業施設であったり、美術館や資料館であったり、一般住宅であったり。
しかしこの建物には、そういった核となる明確な用途がないんです。

「使い方は出来てから考えるので、思ったように造って欲しい」と言うクライアントからの申し出に応える形で、建築家 内藤廣氏が設計。
明確な用途や機能を一切設けておらず「機能のない建築」とうたわれる異例の建物なんです。

今回は比較的空いているであろう平日の休みを利用。

しかしこの平日が、記録的な大雨で都内各所で浸水被害が発生した大荒れの日。
午前中は太陽も顔をのぞかせていましたが、麹町駅に着くと信じられないほどの土砂降り。
いやぁ~、ついて無いですね。泣

「紀尾井清堂」は1階と吹き抜けになった2~5階の建築構造となっています。

ここが1階のエントランス?というべきスペース。
1階の床や壁で使用されている雰囲気のあるタイルは、日本三大瓦でもある石州瓦の焼成窯で棚板として使われていた素材を再利用したもの。
1350度にもなる窯の中で繰り返し使われていた棚板は、一定期間で廃棄されるのだそうですが、それがこんな素敵なタイルとして生まれ変わっています。

過去にはこの1階で東日本大震災の時に倒れず残っていた奇跡の一本松の企画展が行われていたことも。

現在は東日本大震災の鎮魂をテーマに、被災された方の魂の数と同じ約2万ピースのガラスタイルが展示されています。
天気がいい日には、外壁ガラスの屈折によってこのガラスタイルに虹が投影されるらしいのですが、この日はあいにくの悪天候で見られず。

吹き抜けになった2~5階へ行くには、また一度表に出て外階段から向かいます。

2階に上がるとまずに目に入るのが「言葉の曼荼羅」という作品。

建築家 内藤氏の著作などから抽出された言葉の数々を読み取ることが出来ます。

上を見上げると、床や壁は木材で統一されており建物の内部は2階から5階まで吹き抜けの大きな空間が広がっています。
これがなかなかの迫力。

スペースといえばこの大きな吹き抜けを囲むように張り巡らされた回廊のみ。
何とも潔い空間です。

印象として一番目に焼き付いたのは、階段の存在感とその美しさ。

3階から5階の回廊には、内藤廣氏の約40年分の手帳が年代別に公開されています。

この手帳は写真撮影はNGでしたが、複製のためページをめくっての閲覧が可能。
旅先でのスケッチやプロジェクトの図面であったり、思想などが細かに書き込まれていました。
間取りや図面を見るのが大好きな私には、非常に興味深く見応えのあるものでした。

中にはこの紀尾井清堂の照明計画が、ル・コルビュジエが手がけたリヨン郊外にある「ラ・トゥーレット修道院」をイメージしたとの記述も。

内藤氏が師事していたのは、ル・コルビュジエの直接の弟子としてモダニズム建築を学んだ建築家 吉阪隆正氏。
そんな吉阪氏の影響も受けているんでしょうか。

5階まで上がれば、天窓もすぐそこに。
これがまた圧巻。

雨も降っていましたが、この天窓のガラスを通して光が差し込んでいました。

3階から4階には、内階段とは別に外階段もあります。

外から見た階段部分です。

外観は、コンクリートの立方体がガラスで覆われており、まるで空中に浮いているようなデザイン。

階段から見るとこんな感じ。

感覚的には外にいるような印象を受けますが、トップもガラスで覆われているので雨にも濡れず不思議な感じです。

「建築家・内藤廣なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂」
会期:2025年7月1日(火)~9月30日(火)
会場:倫理研究所 紀尾井清堂
所在地:東京都千代田区紀尾井町3-1
開館日:火・木・土曜(9月23日を除く)
開館時間:10:00-16:00(最終入館15:30)

この日は建築を勉強しているであろう学生達も多く見かけました。
こんな素晴らしい建築が見られるまたとない機会。
しかも入場無料と太っ腹な企画展。
また一般公開するタイミングがあったら、是非とも天気のいい日に訪れてみたいものです。

まだまだ暑さも残っていますが、皆様も「芸術の秋」楽しんでみてはいかがでしょう。

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